「米国のFRBが利上げをするとどうなるの?」
「FRBの利上げは為替相場に影響があるの?」
為替関連のニュースを見ていると、米国のFRBの利上げについて話題になることがあります。とはいえ、なぜ利上げが為替相場に影響があるのか、トレードにどう活かせば良いのかわからない人もいるでしょう。
そこでこの記事では、以下の内容について詳しく解説します。
– FRBとFOMCの概要
– 過去に実施された利上げと利下げ
– 利上げ後に為替レートはどうなったのか
この記事を読めば、米国のFRBの金融政策が普段のトレードで重要なことがわかります。FRBの利上げに関心のある人は、ぜひ参考にしてみてください。

米国のFRBとは
米国のFRBとは、米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)の略称で、米国の中央銀行のことです。
日本でいうと日本銀行に該当する金融機関です。
FRBの目的は、金融政策の実施により米国の雇用の最大化、物価の安定化、長期金利の水準を適切に維持することなどがあります。
FRBの動向については、株式、FX、債券、商品(貴金属や原油、コモディティなど)といった銘柄の値動きにも影響を与えるため、それらの金融商品を取引する個人投資家も無視できません。
なぜなら、世界経済の中心は米国経済といっても過言ではなく、その米国の金融政策を決定づけるFRBの判断は、世界の景気にも影響を与えるからです。
当然ながら、FXにおいては米ドル円やユーロ米ドルといった米ドルの通貨ペアを取引するトレーダーだけでなく、他のメジャー通貨ペアやエキゾチック通貨ペアを取引するトレーダーにとっても無視できない存在です。
FRBの行う利上げ・利下げとは
FRBでは、政策金利を上げる利上げと下げる利上げなど政策金利の決定を行っています。
FRBが利上げを行う理由は、好景気による市場の過熱を抑制するためです。
好景気になると働いている人の収入が増えるので、モノやサービスの購買意欲が増します。モノやサービスの需要が高くなると、それらの値段が上がり、物価の上昇につながります。
一見良いことのように感じるかもしれませんが、物価が上昇しすぎると、お金の価値が下がる点に注意しなければなりません。というのも、物価が上昇することは、これまで100円で買えていたモノが120円を払わなければ買えなくなることと同義だからです。
さらに物価が上昇しているにもかかわらず賃金の上昇が追いついていない場合は注意が必要です。モノやサービスを買う値段は上がっているのに、収入が増えていないことになるので、生活が苦しくなります。
そこで、FRBはこのような行き過ぎたインフレを防止するために、利上げを行うのです。
他方、FRBでは不景気になった際に利下げを行うことがあります。
利下げを行うことで、金融機関は資金を調達する際の金利が低くなるので、企業や個人にも低金利でお金を貸しやすくなります。
金利が下がれば返済時に支払うお金が減るため、企業は設備投資や人材確保をするために積極的に融資を受けるようになるでしょう。個人についても住宅ローンなどを利用する目的でお金を借りるので、経済全体が活発化しやすくなるのです。
このようにFRBは金利の上げ下げによって、市場を操作しています。
米国が利上げするかはFOMCの会合で決まる
米国のFRBでは、6週間ごと(年8回)に金融政策を決定するFOMCの会合で、金利を利上げ・据え置き・利下げするかを決めます。
FOMCとは「Federal Open Market Committee」(連邦公開市場委員会)の略称で、日本で例えると日銀金融政策決定会合にあたります。
FOMCはFRBの理事連邦準備銀行総裁で構成されていて、現在の景況判断や政策金利の方針などを話し合って決める会合です。
FOMCの開催日時は既に決まっており、2023年11月以降のFOMCの開催日時は以下の通りです。
– 2023年12月12日〜13日
– 2024年1月30日 〜 31日
– 2024年3月19日 〜 20日
– 2024年4月30日 〜 1日
– 2024年6月11日 〜 12日
– 2024年7月30日 〜 31日
– 2024年9月17日 〜 18日
– 2024年11月6日 〜 7日
– 2024年12月17日 〜 18日
※予定のため変更される場合があります。
そして、毎回FOMCの最終日(夏時間は日本時間午前3時、冬時間は午前4時)に政策金利を含めた金融政策の発表が行われます。さらに、金融政策の発表から約30分後にFRB議長による会見が開かれます。
FOMCでは、発表された政策金利はもちろん重要ですが、3週間後に公開されるFOMC議事録の内容も重要です。
なぜなら、FOMC議事録では参加したメンバーが現在の米国の景気についてどのように感じているのか、どのような判断で政策金利を決定したのかが記載されているからです。
米国のFRBの利上げについて理解するのであれば、どのように決めるのかは把握しておきましょう。
過去にFRBが行ってきた利上げ・利下げの歴史
米国のFRBは何度も利上げ・利下げを実施してきました。以下の表はリーマンショック以降のFRBの政策金利です。

米国の政策金利が最も高かったのは、リーマンショック前の6.50%でした。リーマンショック後は約0%まで金利の引き下げが行われましたが、2022年〜2023年にかけては急激に金利が引き上げられています。
この章では、FRBが直近20年で行った3回の利上げと2回の利下げについて詳しく解説します。
– 2004年6月以降のFRBの利上げ
– 2008年12月以降のFRBの利下げ
– 2015年12月以降のFRBの利上げ
– 2020年3月以降のFRBの利下げ
-2022年3月以降のFRBの利上げ
それぞれの利上げと利下げについて見ていきましょう。
2004年6月以降のFRBの利上げ
FRBは政策金利を1.00%に据え置いていましたが、2004年6月に開催されたFOMCで1.25%に利上げしました。さらにその後も2005年5月まで0.25%ずつ利上げを実施しました。
FRBが利上げに踏み切った理由は、インフレ率の上昇です。
2004年にエネルギー価格が上昇するとともにコア・インフレ率(エネルギーと食料を除いた物価上昇率)の伸びが鈍化したためです。
2008年12月以降のFRBの利下げ
2007年のサブプライムショックや2008年のリーマンショックは米国だけでなく世界中の景気を悪化させる原因となりました。
世界的な景気の悪化を受けて、FRBは金融市場の混乱への対応として、2008年11月にQE1と呼ばれる量的緩和政策を実施しました。
量的緩和策とは、中央銀行が景気や物価を下支えする目的で、国債などの証券を購入して市場に大量の資金を供給する政策のことです。
以後も2010年11月〜2011年6月のQE2、2012年9月〜2014年10月のQE3と量的緩和策は引き継がれていきました。
そして、2008年12月からは政策金利をほぼゼロにするゼロ金利政策が実施され、この政策も2015年12月まで続きます。
2015年12月以降のFRBの利上げ
2015年12月のFOMCにおいてFRBは2006年6月以来の利上げ(政策金利の変更は2008年12月以来)に踏み切りました。背景には、
労働市場の改善が相当進んだこととインフレ率がFRBの中期目標の2%に向かって上昇する核心が得られたことが挙げられます。
その後2016年に1回2017年には3度の利上げを実施します。2017年12月の利上げではFRBは労働市場が引き締まり続け、経済活動が堅調な速度で拡大していることを示していることを利上げの理由として説明しました。
さらに2018年には4回の利上げをしたことで、2015年12月の0.25%から2018年の12月には2.50%まで金利が上昇しました。
2020年3月以降のFRBの利下げ
2020年2月に新型コロナウイルスが世界的に流行したため、FRBは、2020年3月3日にFOMCを臨時開催し、0.5%の利下げを実施しました。
FRBのパウエル議長は、利下げを実施した理由として「新型コロナウイルスは米国および世界経済に悪影響を与え、その規模と期間は不透明であり、経済を支える一手段として利下げを実施する」と説明しています。
さらに、3月16日には追加で踏み切ったことで政策金利を1.0%切り下げ、ほぼ0%にするとともに7,000億ドル希望の量的緩和政策を実施しました。
量的緩和政策とゼロ金利政策は2022年3月まで続きます。
2022年3月以降のFRBの利上げ
FRBは2022年3月に0.25%の利上げを実施しました。
利上げを実施した背景として、長期的なインフレ率の安定とウクライナ情勢の影響によりインフレ率上昇の抑制があります。
そして、今回のFRBの利上げは2023年以降も続いています。2022年3月のFOMCで0.5%だった政策金利は7会合連続で利上げが実施されたこともあり、2023年11月時点では5.50%まで上昇しました。
とはいえ、2023年9月と10月のFOMC会合については、金利が据え置かれています。2023年は12月12日〜13日の会合が残っており、今後さらなる利上げが実施されるのか注目しましょう。
FRBの利上げが実施されると金融市場にどのような影響がある?
FRBの利上げが実施されると金融市場にはどのような影響があるのでしょうか? 利上げが為替を始めとした金融商品に与える影響について解説します。
FRBの利上げが為替市場に与える影響
FRBにより利上げの実施は為替相場にも影響があります。
米ドル円を例にFRBの利上げが為替レートに与える影響を解説します。
FRBが利上げを実施すると言うことは米国の景気が良いことを表すため、ドル建て資産の価値が上昇しやすくなります。その結果、米ドル円についても円安米ドル高に振れやすくなるでしょう。
また、FRBが利上げをして米国の政策金利が日本の政策金利よりも高くなれば、より多くの利益を見込みやすい米ドルに投資をしたいと考える人が増加します。
金利が0%台の日本円と5%台の米ドルがあった際に、どちらに投資した方が儲かりそうか考えてみるとイメージしやすいでしょう。
その結果、米ドル建ての需要が高くなるため、円安・米ドル高になりやすいのです。
ただし、実際の為替相場においては以下のチャートを見ればわかるように、FRBの利上げが必ずしも円安・米ドル高へのきっかけになるとは限りません。

以下の表にもまとめましたが、直近4回の利上げで円安・米ドル高になったのは、2回のみです。
利上げが行われた期間 | 利上げ開始前の政策金利 | 利上げ開始後最も高い政策金利 | 米ドル円の為替レートの推移 |
1999年6月〜2000年5月 | 4.75% | 6.50% | 121.10円から107.29円へ下落 |
2004年6月〜2006年6月 | 1.00% | 5.25% | 108.68円から114.65円へ上昇 |
2015年11月〜2018年12月 | 0.50% | 2.50% | 123.09円から110.18円へ下落 |
2022年2月〜2023年11月現在 | 0.25% | 5.50% | 114.96円から151.70円へ上昇 |
ただし、いずれのケースも上下どちらかに大きく動いていることから、利上げが為替レートに影響を与えているといえます。
FRBの利上げは新興国通貨にはマイナスとなりやすい
FXの取引においてマイナー通貨やエキゾチック通貨を取引している人は、FRBの動向に注意をしなければなりません。
なぜなら、利上げにより米ドルの価値が高まると、相対的に新興国からは資金が流出しやすくなるからです。
FRBの利上げにより金利が上昇すると、米ドル建ての資産でも十分な利益を狙えるようになります。
そうなると、わざわざハイリスク・ハイリターンの新興国の株式や債券に投資をする意義が薄れてしまいます。
できるだけリスクを抑えて米国株や米国債券に投資をした方が、より安全に利益を得られるからです。
新興国は、投資家からの投資を受けられなければ資金繰りが一気に悪化しやすくなります。
実際に、1994年12月のメキシコ通貨危機、1997年7月のアジア通貨危機、1998年8月のロシア通貨危機は、FRBの利上げがきっかけになったとされています。
メキシコ通貨危機では、1990年に54円だったメキシコペソ円は14円台まで急落しました。アジア通貨危機では、タイバーツ米ドルの為替レートが1米ドル25バーツから50バーツへ暴落、マレーシアやインドネシア、韓国にも波及しました。
ロシア通貨危機においても、ロシアルーブルの為替レートが1ドル6.2ルーブルから1999年3月には1ドル25ルーブルにまで暴落するなど、FRBの利上げと無関係とまではいえません。
さらに、米国に端を発するサブプライムショックやリーマンショックの発生時も、多くの新興国の通貨は暴落を引き起こしています。
したがって、米国が利上げを続けている間、新興国へ投資するのはあまりおすすめできません。
米国のFRBの利上げは米国株や米国債にも影響がある
米国のFRBが利上げをすると、為替だけでなく、米国株や米国債にも影響があります。 利上げをすると、金融機関からの借入金利が上がるので、利息を多く支払わなければなりません。
その結果、業績にも悪い影響があるため、株価も下落しやすくなります。
また、債券についても利上げによる金利上昇は良いニュースではありません。
なぜなら、債券と金利は、金利が上がれば債券の価格は値下がりし、金利が下がると債券の価格は値上がりする逆相関の関係にあるからです。
利上げの結果、債券の保有者に定期的に支払われる金利の低い債券の価値は下がってしまいます。
株式や債券など他の金融商品への投資に興味がある人は、FRBの利上げについて特に注視する必要があります。

米国FRBのFOMC発表前後に注意すべき点
米国FRBの金融政策が発表されるFOMCは、FXトレーダーの間でも注目度が非常に高いです。
そのため、FOMCの発表前と発表直後にFXのトレードをする際の注意点についていくつか紹介します。
FOMC発表前のトレードは控える
FOMC発表前の為替相場は、多くの市場参加者が発表を待っている状況のため、トレードは控えましょう。
なぜなら、普段よりも為替レートの値動きが落ち着いているので、エントリーしても大きな利益を狙いにくいからです。
また、FRBの政策金利が判明するのは日本時間深夜のため、うっかりポジションを保有した状態で寝てしまうと、その後の値動きで大きな損失を被る可能性があります。
FOMC発表直後は、値動きが大きいので初心者はトレードを控える
FOMC発表直後は為替レートが大きく動くので、利益を狙うためにトレードしたいと考えている人もいるかもしれません。
しかし、FOMC発表直後に一方向に大きな値動きが発生するとは限りません。
また、上下のどちらにも大きな値動きが発生した場合、エントリーしても損失を被るリスクが高くなります。
また、既にFRBの利上げについて予測されているケースがほとんどです。FOMCの発表前の時点ですでに大きな値動きが起こっていたり発表から数時間以上経ってから大きな値動きが発生したりするケースも珍しくありません。
したがって、FOMCの発表時のみを狙ってトレードしても上手くいかない可能性があります。
FOMCの参加メンバーがタカ派・ハト派のどちらが多いのか抑えておく
FOMCでは、7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持っており、利上げに積極的なタカ派と消極的なハト派のメンバーがいます。
派閥 | 利上げ | 考え方 |
タカ派 | 積極的 | 物価の安定のため、利上げによりインフレを抑えたい |
ハト派 | 消極的 | 雇用の最大化のため、企業が資金を借りやすくして景気を回復させたい |
理事と1名の地区連銀総裁は常に投票権を持っていますが、4名の地区連銀総裁は1年で交代となります。
したがって、FOMCに参加するメンバーがタカ派・ハト派のどちらかは一応抑えておきましょう。
加えて、地区連銀総裁が交代するタイミングでは、タカ派・ハト派の割合がどう変わるのか把握しておいた方が、政策金利の動向を予測しやすくなります。
また、その時の経済状況に応じて、考えが変わるケースも珍しくありません。FOMCメンバーの発言を確認して判断するようにしましょう。
米国のFRBの利上げについてよくある質問と回答
米国のFRBの利上げについてよくある質問と回答について紹介します。これからFRBの利上げに関心があるFXトレーダーはぜひ参考にしてみてください。
米国のFRBの利上げが終了するとどうなる?
一般的に米国のFRBが利上げを終了して利下げを実施した場合、景気が後退局面に入っている可能性があります。過去の事例では2008年のリーマンショック後や2020年の新型コロナウイルスの流行などに伴い、利下げが実施されました。
FRBで利上げが実施されると、他の国の金融政策にも影響がある?
FRBの金融政策は、世界の景気にも影響があります。過去にはFRBとともにECB(欧州中央銀行)やBOE(英国中央銀行)が足並みを揃えて利上げを実施したことがあります。
そのため、米ドル以外の通貨ペアを取引する人もFRBの動向を注視しておいた方が良いでしょう。
現在のFOMCではタカ派とハト派のどちらが多いの?
2023年11月現在のFOMCでは、パウエルFRB議長を始めとして多くのメンバーがタカ派(利上げに積極的)のスタンスを取っています。
唯一ハト派といわれているのは、シカゴ地区連銀総裁のオースタン・グールズビー氏です。
また、12人いる地区連銀総裁のうち現在投票権のない人に範囲を広げてもハト派といわれている人は、他にいないといわれています。
FOMCの結果次第で為替相場が大きく動くことはありますか?
FOMCの結果を市場関係者が予測していなかった場合、発表直後に大きな値動きが発生する可能性はあります。ただし、FOMC発表まえにある程度織り込んでいることが多いため、ほとんど値動きが発生しないケースも珍しくありません。
FXトレーダーは米国のFRBが利上げするか関心を持っておく
米国のFRBの金融政策は、世界経済にも大きな影響があるため、FXトレーダーであれば常に情報を入手しておきましょう。
FRBの利上げにより、2022年以降の米ドル円のように30円以上の円安になるケースもあります。
ただし、既に利上げを始めてから長い期間が経っているので、今後はいつまで継続するのかが焦点となるでしょう。
なお、FXのトレードで利益を出すためには、国内FX業者よりも海外FX業者をおすすめします。海外FX業者ならレバレッジが高くて、入金時にボーナスをもらうことで大きいロットでの取引がしやすいからです。
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