
金価格は過去3営業日にわたり下落し、本日のアジア時間でも売り圧力が続きました。本レポートでは、FRBの政策に対する市場の期待、現時点での米ドルと金の逆相関の有効性、そして今後金価格を揺るがしうる経済指標について考察します。より全体的な視点を得るため、テクニカル分析も併せて提供します。
市場は12月のFOMC据え置きを織り込みつつある
前回レポート以来、金価格の主なファンダメンタル要因となっているのは、市場がFRBの政策スタンスをどのように見ているかです。2週間前、12月会合で利下げが行われる確率は70%と見られていました。しかし先週金曜日時点では、利下げの可能性と据え置きの可能性がほぼ五分五分に。現在、フェッドファンド先物は 57.9%の確率で金利据え置き を示唆しており、残りは 25bp利下げの可能性 を示しています。
最近のFRBメンバーの発言はまちまちでした。
- ローガン(ダラス連銀)とシュミッド(カンザス連銀)は「据え置きが必要」と示唆
- ボスティック(アトランタ連銀)は12月の利下げに慎重
- ウォラー理事は利下げ支持を明言
全体として、中間派メンバーを中心に「12月は据え置き」という見方が強まっており、市場は期待を修正しつつあります。明日はFRBの 10月会合議事録 が発表されます。
議事録が「据え置き」を強く示唆すれば 金価格には下押し要因、逆に「利下げ」を示唆すれば 金価格の支援材料 となり得ます。また、今後もFRBメンバーの発言が市場を揺らす可能性があります。
米ドルと金の逆相関は現在やや弱まっている
金トレーダーが注目するもう一つのテーマは、「米ドルと金の逆相関が現在も有効なのか」という点です。
- ドルインデックス(DXY)は先週、動きが非常に限定的 → 大きなボラティリティがない
- 一方で金価格は火曜日以降大きく変動 → 動きの強さが対照的
そのため、通常意識される 米ドルと金の逆相関は現状では薄れている と見ています。
また、米国債利回りは上下したものの総じて低水準にあり、
- 利回りの魅力が弱い
- 金(無金利資産)の代替として米国債が強く意識されない
という状況が続いていると判断されます。
10月の米雇用統計は金価格を大きく揺らす可能性
政府閉鎖が解除され、今週から米国の重要指標の発表が正常化します。その中でも注目度が高いのが 10月の米雇用統計(木曜発表) です。
- 雇用が大幅に悪化 → FRBへの緩和圧力増 → 金価格の上昇要因
- 逆に、雇用が強い → 引き締め長期化観測 → 金価格の下押し材料
となるため、大きく相場が動く可能性があります。
テクニカル分析

サポート:3980 (S1), 3615 (S2), 3450 (S3)
レジスタンス:4155 (R1), 4380 (R2), 4600 (R3)
金は3日続落後、アジア時間で下落を継続し、3980(S1)サポートライン を目指しています。
現状は以下の通りです:
- RSIは50を下回り、強気ムードは消失→ ただし、明確な弱気シグナルにはまだ至らず
- ボリンジャーバンドが収束→ ボラティリティ縮小、価格安定の可能性
▼弱気シナリオ(ベア)
- 3980(S1)を明確にブレイク → 下落トレンド確定
- その場合の次のターゲットは 3615(S2)
▼強気シナリオ(ブル)
- 4155(R1)を突破すれば上昇トレンド形成へ
- 次の上値ターゲットは 4380(R2)
IronFX上級リサーチアナリスト
ピーター・ヨシフ
公認会計士(ACA)、ICAEW会員


