ブル派は、前回以降、価格をリードしています。本レポートでは、金と米ドルの逆相関関係、FRBへのハト派的期待が価格を支えている点、そして今後数日に金価格に影響を与える可能性のある経済指標について検証します。最後に、金のテクニカル分析でまとめます。 米ドルと金の逆相関は機能していない? 米ドルと金(XAUUSD)の逆相関は、現時点では機能していないようです。というのも、8月22日以降、金価格は上昇している一方で、米ドルは比較的安定して推移しているからです。しかし、先週金曜日から昨日にかけて金価格は大きく上昇し、同時に米ドルは対主要通貨で弱含んだため、両者の逆相関が復活する可能性が高まっています。現時点では「逆相関は不活性」と見ていますが、今後も両者が逆方向に動き続けるなら、米ドルの下落は金価格の上昇要因となり得ます。また、前回レポート以降、米国債利回りは下落しており、これは金にとってポジティブな材料です。米国債の安全資産としての魅力が低下したことで、代替資産としての金が選好されやすくなっているからです。利回りがさらに低下すれば、金価格への支援が強まる可能性があります。 FRBへの市場の期待 前回のレポートでは、金トレーダーにとって米国の雇用統計がリスクイベントになると指摘しました。結果は予想以上に弱く、8月の雇用市場は悪化を示しました。非農業部門雇用者数(NFP)は予想を大幅に下回り2.2万人増、失業率は予想通り4.3%に上昇、平均賃金の伸びも前年比+3.7%へ減速しました。これらは「米国労働市場の緩み」を裏付けるもので、市場ではFRBの追加緩和期待が強まりました。統計発表後、市場は9月会合での「0.5%利下げ」シナリオを織り込み始めました。実現可能性は低いものの、市場がそこまで織り込み始めた事実自体が、ハト派期待の強まりを示しています。さらに、市場は10月と12月にも追加利下げの可能性を見込み始めています。今後もFRB緩和期待が高まれば、金価格はさらに支えられることになります。逆に、期待が後退すれば金価格の重しとなるでしょう。 8月の米CPIが金価格を揺さぶる可能性 市場はFRBの政策決定(9月17日)に向けて注目を強めていますが、その直前に発表される米国の物価指標が重要な分岐点となり得ます。 この予想を見る限り、米国経済には依然としてインフレ圧力が残っていると解釈できます。もしCPIが予想を上回れば、FRBの利下げ観測は後退し、金価格に下押し圧力がかかるでしょう。逆に、インフレ圧力が想定以上に弱まれば、FRBの追加緩和期待がさらに高まり、金価格の一段高につながる可能性があります。 テクニカル分析…